精神科医師をめざす皆さんへ

自らの人生をゆっくり走る精神科の患者さまに並走し、その人らしく生きられるようしっかりサポートするのが私たちの使命です。

私が精神科を志した理由は、精神科が"全人的医療"、つまり、病気だけでなく、患者さまの生活の背景まで診る医療であるということに、関心を持ったからです。精神科は、患者さまの心を相手にする仕事ですが、当然ながら私にも心があり、どこか自分自身の延長線上で仕事に取り組めるような意識もあったと思います。そして、患者さまが回復していくプロセスにも大いに興味を感じました。

私が精神科医師になって20年以上にもなりますが、駆け出しの頃の思いは間違っていなかったと思います。精神科の仕事は想像以上に広く、深く、今も興味は尽きません。

さて、精神科医師のあるべき姿とは、どのようなものでしょうか。たとえば外科医師のように“私が治すぞ!”という姿勢ではなく、患者さまと向き合い、患者さまの“気づき”を引き出すために、聞き役になることが求められます。また、効果的な介入を行うためにも、NS、PSW、OT、CPなどのコメディカルと連携していくチーム医療の視点が、とても大切になります。

また、患者さまの“病気を治す”という視点だけではなく、患者さまが目標に向かって地域で生きてゆくためにリハビリテーションの視点を持つことが必要です。患者さまを支えるご家族と協力し、医療や社会資源を十分に活用できる能力も求められます。

これは当財団が目指している「その人らしく生きられる」よう支えることにも通じると共に、これからの精神科医療により求められるものです。

精神科の医師は、ゆっくり時間をかけて自らの人生を走る患者さまに並走し、あせることなくサポートし続けるのが使命だと思うのです。

林精神医学研究所 理事長 林 英樹